本日は、イエローストーンのミクロの世界をご紹介します。
超低温、超高温、強酸性、強アルカリ性、地下深い場所、深海底、等々、「こんなところで生きられるなんて・・・

」と、想像を絶する厳しい環境の下で繁殖できる微生物が地球にはちゃんといて、それらは「極限環境微生物」と呼ばれています。
イエローストーンにはその「極限環境微生物」がたくさんいるんですよ。私たちが巨大なバイソンを見て大興奮している間にも、壮大なキャニオンの景色に見とれている間にも、莫大な数の微生物が私たちの足元でどっこい逞しく生きているんです

(注)科学的には正確ではありませんが、以下、微生物をバクテリアと呼ばせてください。

サファイヤプール周辺の黄金に輝く物体はバクテリアです。

上から見下ろしても、横に立って見ても美しいグランドプリズマティックスプリング

その、黄色、オレンジ色、茶色の鮮やかな縁どり模様の正体はバクテリアです。
イエローストーンでは次々と新しいバクテリアが発見され、科学の進歩への底知れぬ力が秘められています。
例えば、下の写真「サーマス(Thermus)」はDNA鑑定で大活躍するバクテリア。
明るい赤色またはオレンジ色で、アッパーガイザーベイスン、ミッドウェイガイザーベイスン、ローアーガイザーベイスンの温泉地帯でよく見られます


( LIVING COLORS: Microbes of Yellowstone National Park より写真引用 )
「サーマス」は1969年にイエローストーンで発見されました。それまでは69℃が生物生存の限界温度と考えられていたのですが、「サーマス」は40℃~79℃で繁殖可能な高温大好きな生物。当時の科学者の常識を覆す大発見でした。熱に強いこのバクテリアはDNA鑑定のプロセスでポリメラーゼ連鎖反応 (PCR: Polymerase Chain Reaction) に使われ、スピーディで安定した鑑定結果を得ることに貢献してます。ポリメラーゼ連鎖反応とは少量のDNAを複数コピーする反応です。イエローストーンのバクテリア「サーマス」のおかげで、ほんのわずかな血液、唾液、毛髪、皮膚などのDNAをたくさんに増やして効率よくDNA鑑定ができるようになり、犯罪解決、親子関係判定、病気の原因究明や治療方法開発などに大いに役立っているのです。ちなみに、ポリメラーゼ反応での特許料収入がイエローストーンには入ってきて、公園運営に充てられているそうですよ。
イエローストーンには、他にも、生命誕生の謎を解くカギと考えられるバクテリアや有害危険廃棄物の処理や新エネルギー源開発等に活かされるバクテリアも存在してます。まさにイエローストーンは「地球を救うバクテリアの宝庫」なんですね

以下、バクテリアの写真をご覧ください。肉眼では見ることができない微生物なのですが、このように集合体となって私たち観光客の前に姿を見せてくれるのもイエローストーンならではの魅力です


きれいですよね~。

アッパーガイザーベイスンにて

アッパーガイザーベイスンにて

ノリスガイザーベイスンにて

マンモスホットスプリングスにて

ノリスガイザーベイスンにて
「あ、イエローストーンで見た見た!」と、思い出される方もおられるでしょう。
これからイエローストーンに来られる方も、イエローストーンのミクロの世界をどうぞお楽しみに!